実行できるのかというのは、やる気の問題もあるんですけれども、そもそも能力の問題というのがある、と。原子力規制委員会というか、実際に現場で動くのは規制庁の人たちですけれども、検査をやる人とか、いろんな審査をやる人、そういう人たちにどれだけの能力があるのかというのが非常に気になるところなんですね。
これは、ただ、実際にいま働いている人がどういう人たちなのかということを考えるとほとんど自明なんですけれども、基本的に昔あった原子力安全・保安院という、経産省の傘下にあった組織で働いていた人、あるいは文科省で働いていた人、つまり以前の古い体制の下で原子力安全について仕事をしていた人たちが大量に出向してきて、そこでこれから実際の安全審査、あるいは検査をやっていくということになるわけです。
もともとここにいる人たちのうち、本当の原子力の専門家というのは数えるほどしかいないと言っていいと思うんですね。もちろん、原子力の専門家だけではなくて、工学系、あるいは理学系、いろんな専門家が必要なんですけれども、そういう本当の意味での専門家が実はそろっていない。
去年、30人ぐらいでしたか、ドクターを持っている人たちを大量採用するということで募集をかけたりしていましたけれども、そういうところを見ても、その人たちをこれから育てていくという段階なんです、実はそれがちゃんとできるのかというのが、一番の課題ですね。それで、それがわずか数カ月でできるかというと、とてもそんなことはあり得ないので、結局、走りながらというか、勉強しながらやっていくという状況になります。最初に審査して、再稼働を認めますよというのを出すところでは、たぶん相当レベルの低い審査、検査しかできないだろうなというふうに思います。それがちょっと怖いな、と。
それから、テロ対策というのが一応、今度の安全基準の中に入ってきたわけですけれども。これが日本ではほとんど役に立たないんじゃないかなと思うんですね。この間、あれは確か「報道ステーション」だったと思うんですけれども、アメリカの原発の規制で、テロ対策をどれぐらいやっているかというのをやっていました。あれ、映像で見るとすごく迫力があって、おもしろかったですけれども、本当にものすごい武装をした兵士が100人以上いるんですよ、一つの原発に。そういう人たちが常に動いている。
それから、もう一つ、検査官たちも完全に独立していて、いつでも、どこでも立ち入りできるんですね。抜き打ちで、日常的に。だから、「ちょっとここ、入るよ」というか、事前に「行くよ」と言わないで入っていっていいんですよ。というぐらい非常に独立性が高い。ですから、すごい緊張感が出てくるんですよね。
日本の検査のやり方というのは基本的に、「何月何日何時から何時まで検査に行きますよ」と言うと、電力会社のほうが下準備をして、じゃあ、こことこことここを見てくださいとやるんですね。アメリカみたいに、いつでも入れますという状況には、たぶんならないだろうなと。
そもそも検査官がいるところが原発から離れたりしているんですよね。アメリカなんかは、原発の敷地の中にいて、いつでも入れるんですけれども。そこらへんの体制がかなり違うので、日本も本当にできるか、というのは非常に不安だということを申し上げておきたいと思います。